たとえば、親と同居して面倒を見てきた子供Aは、「その分多めに財産がほしい」と思います。しかし、遠くで独立して生活していた子供Bからすると、「その分Aは生活費がかからなかったから得しているではないか」ということになります。また、子供Cは「親が住んでいたこの家に、もう誰も住まなくなる。早めに売ってしまおう」と思ったとします。これに対し、子供Dは「この家には親と自分たちの思い出がつまっているから、誰も住まなくなってもそのままにしておこう」と思ったとします。
そのようなそれぞれの思いを、うまく交通整理しながら十分くまないままに、おとなしいBやDに発言の機会を与えずに、専門家が長男Aや声が大きいCの意見に押されて事務的に遺産分割を進めると、あとになってBやDの不満が爆発します。せっかく作った遺産分割協議書が守られなくなってしまいます。
上記②の遺産分割では、通り一遍の法律の知識と事務作業だけでなく、そういう関係者の思いにもしっかりとよりそわなければいけません。その際の交通整理には、経験と傾聴とバランス感覚が求められます。